[成績]


香川大学 経済学部 経済学科 1997 年度 専門教育科目(3,4年次生対象)

授業科目:(特)経済学で現代社会を読む
単位数:2単位
開講学期:後期
講義日時と場所:金曜 1030-1200 E21
教官:三原麗珠 / H. Reiju Mihara
Office phone: 0878-36-1878

1.概要

経済分析は〈個人の合理的選択〉(個人は目的を持ちその目的を達成するのに最適な方法を選ぶという仮定)にもとづく社会分析である.このコースでは,航空安全・犯罪・売春・麻薬・妊娠中絶・規制緩和・高齢化・死刑・福祉・ゴミ・動物保護・地球温暖化・教育・喫煙・新薬認可などの問題に,経済分析の鋭いメスで切り込むことにする.経済学の対象が経済現象にかぎらないことを伝えると同時に,受講者の世界観に変革を与えたい.

2.講義要目

生と死をわける:新薬認可の経済学 事実は小説より奇なり:航空安全の経済学 犯罪を選択する:犯罪防止の経済学 美徳の不幸と悪徳の栄えと:売春,酒,麻薬禁止法の経済学 過剰の中の不足または不足の中の浪費:水利権の経済学 減反が招く蟻地獄:農業保護の“不”経済学 善事は省事に如かず:高医療費の経済学 中絶の権利か胎児の生きる権利か:妊娠中絶の経済学 都市破壊の元凶を暴く:家賃規制の経済学 ウオール街の千鳥足:証券価格の経済学 共産主義キャビア・カルテルの崩壊:カルテルの経済学 価格介入の失敗:自動車保険の経済学 遅くともしないよりはいい:航空規制撤廃の経済学 丁ならオレの勝ち,半ならオマエの負け:預金保険の“不”経済学 麻薬戦争の社会的費用:マフィアの掟の経済学 黄金の老後は夢のまた夢?:高齢化の経済学 目には目を:死刑の経済学 アメリカの貧困:福祉の経済学 清掃車はキットやってくる:廃棄物処理の経済学 バイ,バイ,バイソン!:稀少動物保護の経済学 汚染売ります:公害防止の経済学 地球温暖化の常識と非常識:温室の経済学 経済政策版マーフィーの法則?:燃費規制の政治経済学 教育と選択:教育改革の政治経済学 アメリカの夢を殺す:住宅規制の政治“不”経済学 紫煙くゆるところに火種は消えず:喫煙の政治経済学 巨人たちの戦い:国際分業の経済学 750,000 ドルの雇用:保護主義の“不”経済学 単一の世界:経済統合の経済学

3.講義方法

あらかじめテキストの各章ごとに発表者を決めておく.(希望による.希望者だけでは足りないときは,講師が適当に発表権(義務)を割り当てるので,その義務を自分で果たすか,他の学生にゆずるか,他の学生と共同で負うか,決めておくこと.)発表者は 30 分をめどに,ひとつの章を発表する.発表内容はテキストであつかわれているものに限る必要はないが,その章のポイントは押さえること.楽しく愉快に発表してくれれば,なおいい.(学生に発表してもらう理由のひとつは,講師がやるより楽しくできるだろうから.)出席者全員の積極的な質問やコメントを歓迎する.必要があれば講師からコメントを加える.

4.テキスト

  • ロジャー・ミラー,ダニエル・ベンジャミン,ダグラス・ノース『経済学で現代社会を読む』赤羽隆夫[訳],日本経済新聞社,1995.
  • 5.参考文献

  • Friedman, D. The Machinery of Freedom: Guide to a Radical Capitalism, 2nd ed., Open Court, 1989. 〈無政府資本主義〉へのガイドだが,応用経済分析の本としてもすぐれている.なお Friedman の Web page (http://www.best.com/~ddfr/) からは,法律や犯罪の分析に経済学を応用した彼の著作のいくつかが入手できる.
  • 小谷清『「反」特殊主義の経済学:日本経済論の通説を断つ』東洋経済新報社,1996.日本の経済社会現象を,制度的特殊性にうったえずに,経済分析によって説明.ただし,分析の仕方が通常の経済学者によるものとかなり異なっているおり,常識的見解やテキストの記述と真っ向から対立する内容も多い.(テキストじたいは非経済学者の常識と対立する内容が多い.)「規制緩和論の論調は,高圧的で居丈高であることが特徴的である.まるで神託を告げるかのような昔のマルクス主義の大家をほうふつさせるその様は,わが国で“進歩的”“革新的”と呼ばれる言論の分かち持つ特徴である」(p. 110)という記述からも想像できるように,挑発的な一冊だ.
  • 6.関連授業科目

    この科目は経済学の知識をまったく前提としない.(1,2年次生がこの科目をとれないのは,純粋に制度的な拘束によるものであり,合理性はない.)

    7.単位認定方法

    期末試験による予定.発表を行った者については,分かりやすさやエンターテインメント性などから発表内容を総合的に評価し,成績に加える.彼らの評価は標準で成績評価1個分高くなるか(X が C になるなど),A になるだろう.


    成績評定

    登録者30名,期末試験受験者10名,合格者10名.優5,良1,可4,不可0.

    以下に期末試験の点数(総点は50点)と評定とをしめす.

    試験点数 37 35 35 33 33 31 29 25 25 20
    試験の評定 B B B C C C X X X X
    総合評定

    [Up: list of courses]
    [Previous: Microeconomics 97] [Next: Undergraduate Normative Economics 97]


    三原麗珠

    inserted by FC2 system