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メカニズムと権利

「掲示」の残骸

目次


シラバス

香川大学経済学部 専門教育科目 2000 年度
授業科目名 経済学概論A (メカニズムと権利)
教官名 三原麗珠(経済学部) / H.Reiju Mihara
2単位 第1学期 木曜4時限(1440-1610) E21教室

1. 概要

経済学を学ぶには,経済数学(微積分や線形代数)や2年次以上で開講されている非協力ゲーム理論とミクロ経済学で基礎理論をマスターした上で,それぞれの理論・応用分野に進むのが正攻法です.しかしあらかじめ経済学の一端だけにでも触れておきたい勉学意欲旺盛な方もいるでしょう.今年の「概論A」ではそのようなみなさんを,社会を理解し改革しようとする闘いの(理論研究での)最前線に一気に連れていくことにします.基礎を固めつつじっくり歩んでいくのが正攻法なら,この科目は 戦争体験ツアーです.目標は(i) 経済理論をはじめとする大学レベルの数理系科目を学ぶための抽象的思考力を養成すること(数理後進性からの解放 )と(ii) ゲーム理論や経済理論の主要概念が研究の最前線でどのように生かされているかをしめすこと(武器のデモンストレーション),の2つです.この体験ツアーが今後独力で経済学を学んでいけるくらいの知的パワーと情熱とをみなさんに与えることを願っています.

経済学は個人の合理性によって社会現象を説明しようとします.この講義では現象の説明だけに満足しません.その二歩先をめざし,特に次の2つの問題に注目します: (i) 個人が合理的に行動した結果が望ましいものになるためにはどのようにルールを決めておけばいいだろうか?(ii) 結果さえよければルールが個人を束縛してもいいだろうか?

2. 講義要目

3. 講義方法

二種類のレクチャーノートを再構成して講義を行う.学生は文献や講義を参考にして,演習問題を自習していく.重要な概念を記号化して, 極端とも思えるほどに分析的で緻密な議論を進めていく.具体的な問題をひじょうに抽象化してあつかう.講義あるいは自習の片方だけで内容を理解するのは無理だろう.

4. 必読文献

他の方法でこれらの文献を入手できないときは,3号館3階「共同研究室」(情報処理センターと法学部の入り口の間の階段を上って左斜め前,大藪研究室の向かい) の佐藤幹子助手に問い合わせること.

5. 参考文献

6. 関連授業科目

(特)メカニズム・デザイン,経済数学,非協力ゲーム理論,ミクロ経済学,公共経済学,数理経済学,(特)投票制度分析.哲学,論理学,倫理学,法学,政治学,数学とのかかわりも深い.これらの分野の知識は前提としない.

7. 単位認定方法

原則として期末試験による予定.ほとんどの問題は演習問題の類題である.学期中に抜き打ちテストを何度か実施するかもしれない.


あつかう題材についてもうちょっと: シラバスへの追加

この授業は(i) メカニズム・デザインと (ii) 数理権利論を題材にしている.それらがどういう問題をあつかうかってことについては,公式シラバスでは「(i) 個人が合理的に行動した結果が望ましいものになるためには,どのようにルールを決めておけばいいだろうか?(ii) 結果さえよければ,ルールが個人を束縛してもいいだろうか?」と書くにとどめておいた.A4で1ページという紙面の制約上があったからね.

まあ,経済学にかぎらず,ある学問分野を勉強する前にその分野についていろいろいうよりは,さっさとその分野の勉強を始めてしまったほうが早いということは多い.だけどそれじゃ「ぜんぜん思っていたものとちがっていた」というのがだいぶ勉強をすすめた後にはじめて分かって,みなさんが失望する原因にもなる.そこで,みなさん教育サービス消費者が賢い授業選択ができるように,もうちょっとだけ情報を提供しよう.

この項目ではメカニズム・デザインと数理権利論が何を対象にしているのかをもう少し説明し,それに加えてこの授業でじっさいに繰り返し現れる 具体例(逸話)をあげておく.もっとも幼稚園の道徳の授業ではないから,逸話がメインじゃあない.それらの逸話を数学のことばに翻訳し,あとは翻訳された対象をパズルのような感じで分析することになる.だから数学のような授業といえるかな.というと,みなさんは(実数とか,実数値関数とか)主として数を対象にした高校数学を思い浮かべるかもしれない.そうじゃあない.ここでいう数学は,「数ではなく 抽象概念を対象にした数学」だ.だから高校数学の知識がなくても,記号的・抽象的思考力さえあれば問題ない.

もちろん,みなさんがこの授業を選択するかどうかは他の授業との関係で決まるだろう.(「この科目をスキップしても他の科目の理解はだいじょうぶなのか」といった関係.この授業と同じ時間帯に開講されている授業との関係はメインではない.) その情報は後の項目で提供する.端的に言えば,この科目をスキップしても,今後経済学を勉強するうえで支障はない.この科目は,もともと学問にかなり熱意のある学生が,その熱意をさらに増幅するための「戦争体験ツアー」なわけだから.将来,優秀な「軍人」になるか,熱心な「平和活動家」になるか(いずれも「熱意ある学生」の比喩)どちらでもいいが,どちらかになるような学生を想定している.特にあつかう対象が経済現象とはいいがたいので,他学科の学生にいいかもしれない.ただし 三原麗珠の「演習(ゼミナール)」に関心がある経済学科生は,履修してておいた方がいいだろう.じっさいは話が逆になるのが自然で,この科目を受けた結果,たまたまここであつかうような理論に興味を持つようになった学生が,三原麗珠の「演習」を考えてみるようになるのだろうけど.

じつはこの授業は1999年度に僕が担当した2つの授業を再構成したものになっている.その授業のWeb pages にさらに詳細な情報が載っているので,できればそちらを見るのがいいだろう.ここでは最低限知っておいてもらいたいことを抜き出してくることにする.


メカニズム・デザインであつかう内容

まずメカニズム・デザインの応用例をひとつ.地球産業文化研究所 では,秘かに経済理論家や実験経済学者に呼びかけて,地球温暖化対策のための排出権取引国際「市場」の設計という恐るべき陰謀 (と古風な環境主義者はいうかもしれない)を企てている. みなさんの先輩にも,この陰謀(?)に加担している世界的メカニズム・デザイナーがいる.

では,1999年度「メカニズム・デザイン」のページ から引用:

[1999年度「メカニズム・デザイン」のページからの引用おわり]

2年生以上は同じ学期に出ている特別講義「メカニズム・デザイン」 を履修できる.特別講義では,不完備情報のケースに重点を置く.ひとびとが互いに相手の選好を確実には知らないような状況である.裁判とか契約とかの場面をのぞけば,そのような状況の方が自然かもしれない.ただし不完備情報のケースをあつかうためには,この授業(メカニズムと権利)でやるよりも深遠なゲーム理論の基礎知識(ベイジアン・ナッシュ均衡などの概念)を準備しなければならない.数学的にもやや複雑になる.また,特別講義では,オークションとか公共プロジェクトとか,経済学への応用も重視する.この授業(メカニズムと権利)ではメカニズム・デザインの応用例は「ソロモンの窮地」の解決策にかかわるものばかりである.


数理権利論であつかう内容

1999年度「権利論への数理的アプローチ」のページから引用・再構成: [1999年度「権利論への数理的アプローチ」のページから引用・再構成おわり]


経済学概論Aのこれまでの存在意義は失われた

経済学概論Aは存在意義を失い,絶滅の危機にさらされている科目です.香川大学経済学部で経済学を学ぼうとする学生が,最初に取っておかなければならない科目ではありません.もともとそうした位置づけではなかったし,今年度からはその必要性はさらに下がっています.(経済学関連科目の一覧は,三原麗珠「 香川大学で経済学を学ぶために:モデルプログラム」を参照.)

では概論Aは1999年度までは,どのような科目だったのでしょうか? それに答えるためには,経済学科での他の科目の位置づけを見なければなりません.経済学を学ぶには,伝統的には「ミクロ経済学とマクロ経済学でまず基礎理論を固めた上で,それぞれの理論・応用分野に入るのが正攻法」とされてきました.(現代では非協力ゲーム理論がこれらにくわわる.またマクロはミクロの応用と見なされる傾向が強くなっている.) しかしこれらの基礎理論にあたる「ミクロ経済学I」と「マクロ経済学I」(各4単位;いわば「成人向け」あるいは「基礎編」)は,経済学部では1年生は取れませんでした.入学当初は全学共通科目 (旧「教養科目」; 全学開設の外国語科目をふくむ) を重点的に取って欲しいという配慮からです.学部開設科目(旧「専門科目」)として「経済学概論A」「経済学概論B」とを配置していますが,前者にかんするかぎりその存在(位置づけ)にそれほど積極的な意義はなかったのです.(なお概論Aは主流派経済学者が担当.概論Bはマルクス系あるいは,制度的アプローチの経済学者が担当.) あえて意義をあげればつぎのようなところです:

(i) 「基礎編」のためのウオーミングアップになる.いきなり「成人向け」を勉強し始めるのは,高校卒業程度の頭脳にはきついだろうというもの.「成人向け」で学ぶ知識をあらかじめ部分的に知ってもらっておくほうが,「成人向け」をいきなり始めるよりはショックが小さいということ.

(ii) 1年次に経済現象あるいは経済学をメインにあつかった科目がなんでもいいからあった方がいい.そのような科目は,これから学んでいく経済学の雰囲気を学生につかんでもらうためもになる.経済学部生が旧教養科目としてとれる経済学科目は限られていた.旧専門科目として概論と(今年度教養に吸収された)少人数科目以外に経済学科で出していたのは,数学 (「経済数学A」「経済数学B」)や統計学,情報処理基礎といったところで,いずれも経済学プロパーではなかった.概論のみがとりあえず経済学をメインにあつかう授業だった.

(iii) 将来経済学を学ばない学生のために,入門かつ終着点として,経済学の一面を教えていた.

じっさいの概論の授業は,それぞれ意味があるものでしたが,カリキュラム全体での概論の位置づけはそれほど積極的なものではありませんでした.むしろ 数学や統計学・情報処理の手法を早いうちに学んで,概論はスキップしてさっさと「基礎編」のミクロ・マクロに進んでもらいたいというのが,私をふくむ教員の願いでした.「経済学とは何か」について論じる授業を経済学を学ばないうちに一学期間聞くよりは,まずはきちんと準備をしたうえで,経済学そのものを正攻法で勉強をしてもらいたいというわけです.You had better learn economics than learn about economics というわけです.

それでは概論Aの位置づけが今年度からどのように変わったのでしょうか?旧教養科目のミクロ経済学とマクロ経済学とを経済学部の1年生も(全学共通科目の一区分である)導入科目としてとれるようになった のです.(現時点での正式な科目名は「経済学A:ミクロ経済学」「経済学B: マクロ経済学」だが,また変わるかもしれない.いずれも2単位の「ベビー向け 」あるいは「予備編」.)これらは従来は経済学部生に閉ざされていた科目です.この変更によって,ミクロ経済学とマクロ経済学のウオーミングアップとしての概論の位置づけ (i)は崩れました.そしてとりあえずなんでもいいから1年次にとれる経済学という位置づけ(ii) も崩れました.もはや概論Aの存在意義はほとんどなくなったのです.

それではなぜ概論Aは残っているのでしょうか.ひとつの理由は現状維持の力が大きいからです. もうひとつの理由は,やや合理性があるもので,テクニカルな話です.じつは概論Aをなくしてしまえば,経済学部生が「ベビー向け」の2単位ミクロとマクロに殺到するのではないかという危惧があるのです.経済学部の学部開設科目とちがい,全学共通科目では授業に人数制限をしているから,受講者が一定人数を超えると,教室を分割して授業しなけらばならなくなるのです.どれだけの授業数が必要か予測できない不確実性に対応できない状況を考えれば,授業数が確定しやすい今のままの方がマシだというわけです. 最後の理由は,概論には先にあげた以外の存在意義があるかもしれないからです.今年の概論Aは,そこの可能性を模索している面があります.


今年の概論Aはこれまでとはちがうところに存在意義を求める

1年次に現在現象あるいは経済学の一端だけにでも触れておきたい学生のために経済学概論Aは存在していました.また,2年次になれば学べる経済学の知識を一部あらかじめ得ておいて,後で楽したいという学生のためにも概論A は存在していました.

ところがすでに述べたように,概論Aの置かれている状況は大きく変わりました.今年の概論はいまあげた2つの目標を追及しません. 題材は経済現象とはよびがたいものを意図的にとりあげていますし,標準的な経済学にかかせない市場分析は行いません.「基礎編」ミクロ・マクロで習うはずの知識をあらかじめ切り売りして,みなさんに楽をしてもらうことも目的にふくまれません.結果的にこれらの目標が実現されてしまうのは構わないし,そういう面があることは否定しませんが,それは結果であって目的ではありません.

シラバスで述べたように,今年の概論Aは「戦争体験ツアー」なのです.標準的な経済学教育で重視されている部分(いわば決着のついた問題)はとりあえず置いて,現在研究が進行しつつある最前線のひとつに学生を連れていって,その興奮を伝えることに目的があります.プロの軍人にはおよばないが,みなさんにもとにかく武器を手にしてもらってその威力をためしてもらいたいのです.そして軍人でも反戦平和主義者でもどちらになってもいいから学問に情熱をもってもらいたいのです.軍事的な比喩が嫌いならダンスとか楽器演奏などの芸術の比喩でもいいです.とにかく見たり聞いているだけではなくて,そしてコツコツ努力するだけではなくて,たまには新しいテクニックを取り入れて几帳面なインストラクターを怒らせて欲しいのです.体験ツアーを脱落せずに終えたときには,新たな知識への欲求がみなさんのなかに沸き上がり,新たな知識の受け皿がみなさんのなかにできあがっているでしょう.

それでは,「戦争体験ツアー」はいらないという人はどうすればいいでしょう.ひとつの手は「ベビー向け」ミクロ・マクロを取ることです.これは将来経済学をやろうという方にはすすめられません. まず,将来はどうでもいいからとにかく楽勝科目を狙う人は他を当たるのがいいでしょう.つぎに,2年次以降に楽をするためにいまのうち苦労しておいて,合計努力を最小化したい人にもあまりおすすめできません.分割してしまうと二度苦労することになり,努力の総量は最小化できないからです.2年次になって「成人向け」つまり「基礎編」ミクロ・マクロをとるときに頑張ればいいのです.理論をマスターするにはある程度短期間で集中的に高速にやるのが,効率的なのです.(もちろん,2年次になって「ベビー向け」と「成人向け」とを同時に取るというのは覚悟さえできていればとても賢いやりかたで,従来は「反則」でした.このずる賢いことをする人が多すぎると受講者殺到というべつの問題を引き起こすおそれがあるのですが,そっと教えておきます.) 最後に,努力の総量を最小化できなくてもいいからいきなり「基礎編」受けて落としてしまうリスクを避けたい人はどうでしょう.このタイプの人は,「ベビー向け」を受けても損はしないでしょう.ただし心配しなくても「基礎編」は毎年出ています.だいいちそのような中途半端な態度でかりに「ベビー向け」を取ってしまったとしても,また「基礎編」ではリスクが待ち受けています.

大切なのは「経済学を1年次でとった方がいい」というあやまった考えを捨てることです.回り道のように見えるでしょうが,数学や統計学のような,テクニックを教える科目をきちんと学んでおくことの方が,長期的には経済学の理解を格段に向上させることになります.(経済学科のばあい,統計学と数学だけでも1年次基礎科目の要件6単位をみたしてしまいます.) 全学共通科目を自由に興味のおもむくままに取って,教養を深めればいいでしょう.なお,将来経済理論の理解を深めるような科目をどうしても知りたいという人には, 論理学数学を推薦しておきます.これらは本を読むだけではなかなかモノにできない科目なので,大学の授業として取る価値が高いのです.


じつは今年の概論はぜんぜんちがう科目になっていたかもしれない: 読書案内

概論Aの置かれている状況は変わりました.この科目を担当することになった私はどういう科目にすべきか考えました.最終的に落ち着いたのとはだいぶちがう内容も当初は考えていたのです.それについて語ることはいい読書案内になるので, この科目を取らない学生へのさようならの意味もこめて,ここで語ることにします.

経済学的な考え方を学ぶ科目」というのが当初考えていた内容です.個人の合理的選択によって社会現象を説明するという科目です.対象は経済現象に限定しません.じつはその手の科目を1997年度に 特別講義「経済学で現代社会を読む」として出したことがあります.内容にはぜひみなさんに知ってもらいたいことが多いのですが,授業ではあつかいにくいというのが教えたときの感想です.しかも概論は1年生がとれる科目です.テレビ番組を見るのと大差ないどうでもよさそうな主題科目講義や,バーで一杯やりながら議論するのと大差ないサロン的教養ゼミナールなどで退屈しているだろう1年生を相手にしなければならないのです.読めば分かるような内容をわざわざ授業にして出す気分には,今回はなりませんでした.

授業でやる代わりに,経済学的な考え方を学べる本だけあげておきます.経済学的な考え方の徹底した日本人を私は知りません.(「 れ・イジュのエッセイたち」にその例外になりえる作品がいくつか収録されています.)どうしても常識をいれてしまい,中途半端で論理が徹底しないのです. ここにあげる本はどれも経済学的な考え方をかなり徹底した一般書です.大学卒業までにぜひこれらの著者の本を何冊か読んでみてください.新鮮な刺激を受けることでしょう.

さて,経済学的な考え方を教える科目をあきらめた私はどうしたか.まず,なにかテキストを使うような授業を考えました.最後まで残った候補は次のテキストでした: このテキストの気に入ったところは,(i) 文章や説明が最適化されており,それらの構造が単純で分かりやすいこと,そして(ii)「国民と投票」「政党と政策」といった 政治学的な話題を重視し,規制や外部性や公共財など経済学的話題よりも先に配置していることです.経済学者は政治を捨象して経済現象のみをあつかう傾向があります.そういう捨象は学問の発展には不可避な手続きです.しかしはじめて経済学を学ぶ相手にはまず捨象する前の部分も教えたほうが,話の全体像を掴んでもらうためにいいのです.さいわい政治現象も経済学の方法であつかえるのですから,教える価値は大きいです.

しかし結局,授業の準備のことを考えるとやめておこうという気持ちになりました.あるテキストをはじめて使うと,授業の準備に時間がかかります.一方,私はこの授業と同じ学期にべつの科目をはじめて使うテキストで教えるつもりなのです.時間的にきついわけです.

そういう事情があって,1999年度に私が担当した2つの授業を再構成した科目を出すことにしました.これなら講義ノートもすでにできています. そのことが重要である理由を説明しておきます.この科目「概論A」は例年数百人の学生が登録します.(今年は学生少ないだろうが,とりあえず多い事態も想定しておかなければならない.) 授業当日に講義ノートを配付するようなやり方では,時間その他のコストがかかります.(徹夜して授業直前まで準備していた講義ノートを授業数分前にコピーし,授業時間に学生に配る,というのが私の通常のやり方.これではコピーマシンが調子悪かったり他の人が利用中であったときのリスクが大きいし,人数が多ければ自分の研究費から出しているコピー代もちょっとだけ気になる.[経済学部へ就職しようとしている学者への注釈: コピー代節約のためか, A4 の用紙2ページをA3にコピーして配る同僚もいる.じつはリトグラフを使えば自分の研究費から出さなくてもすむ.]配付するだけに3分くらい使ってしまうかもしれない.かといって学生に数ページのノートのコピーを買わせるとなると,ある程度の余裕をもって店に原稿をいれなきゃいけないし,たった数ページのノートのために数百人の学生が移動しなければならないコストは大きい.電子化されたノートをダウンロードさせるのもまたべつのコストがある.) テキストでも講義ノートでもいいけれど,学期開始時にある程度まとまった教材を配付したいわけです.概論Aで使いたいテキストは見つけられなかったので,去年用意した教材を再構成するということにしました.


メカニズム・デザインとか権利論とか,はじめて経済学を学ぶには標準的とは思えない題材を 選んだ理由

この文書を順に読んできて,脱落せずにここに至ったあなたは偉い.あなたは一流を求めて香川大学経済学部に入学してきた学生にちがいない.この授業はそういう あなたからの挑戦状に対する三原麗珠の返答である.三原麗珠と出会ってこの授業でやるような内容を学ぶことができるのは,神に感謝してもいいくらい奇跡的な幸運である.おめでとう.他大学に進学していたら,はじめての経済学をこのような形で学ぶことはなかったであろう.あなたは10年後の未来を今体験しつつあるのだ.

理由1: 内容が高度すぎるわけではない

では20世紀も暮れようとしている現代において,どうして入門レベルで通常この科目でやるような内容をやらないか.ひとつの理由は,この概論でやる内容が高度とされていて学部上級生以上が持つ程度の予備知識がいると通常は思われているからだ.だがじっさいは大学院レベルでしか教えられないであろうと思われていた話題が,頭脳明晰で説明のうまい学者によって分かりやすく書き直され,学部入門レベルでも教えられるようになっている例はゲーム理論などに多い.(基本的なことと思われていたことの方が,あとで振り返ればかえって高度だったことが分かったりする.) そしてこの概論でやる2つの話題は,じっさいそのような学者たちに書き直されたことがあるもののバリエーションにすぎない.また,どちらの話題も経済学に関する知識をまったく要求しない.

  • この授業でカバーする権利論はすでに1980年に書かれていた佐伯 胖の『「きめ方」の論理』の第4章の拡張である.その章の主要定理である〈自由主義のパラドックス〉はその本で「高校生にもわかる」ように書かれていたアローの定理の証明よりもはるかに証明の簡単なもので,いわば 中学生にも分かるものである.

  • メカニズム・デザインは,もともと神秘的な要素の強い(一部の理論家にしか分からない密教のような)ものとみなされていたところがある.しかし その神話は旧約聖書の寓話をもちいてメカニズム・デザインの基本アイディアを解説したMoore の展望論文(1992)で完全にくずされてしまった .(本物の神話をもちいて経済学界の神話を崩したわけだ.)この授業でカバーするメカニズム・デザインは Moore の解説を下敷きにしている.

    もちろん高度な内容を分かりやすく翻訳した結果,抽象的だった理論が具体例に還元されるなど,具体的になりすぎてしまってかえって分かりにくくなることはある.(「あなたの話は具体的すぎて分かりにくい.もっと抽象的に話してもらえませんか」と数学者は言うというジョークがある.) 新聞をいくら丁寧に読んでも,政治がどう動いているのかが把握できるようになるとはかぎらないのと似たことだ.そこでこの授業では直感的な例に訴える一方, 分析の枠組みだけはごまかさずに厳密に紹介し,理論の構造を理解してもらうことにする.その結果,一見「高度」に見える数学的表現が頻出することになる.しかし高度といっても予備知識を多く必要とするわけではない.(「新しい数学」が盛んだった昔は小学校で教えていた)集合と写像の概念,そして論理記号を使うだけだ.抽象的思考力と忍耐力が要求されるにすぎない.一年生だから理解できないということはありえない.

    理由2: 経済学の対象が経済現象にかぎらないことを強調できる:合理的選択の政治理論への脱線

    経済学は経済現象のみを対象とする学問ではない.その点を強調するために,経済現象とはいいがたい題材を意図的に選んだ.経済学概論の目標のひとつが経済学という学問の特徴をしめすことにあるならば, 他の学問分野であつかう現象(法制度とか政治現象とか道徳的寓話とか)を対象にすることは,その学問(法学とか制度重視の政治学とか倫理学など)によるアプローチと経済学的アプローチの比較を可能にし, 経済学的アプローチの特徴を際立たせるために有効である.(法学との関係については,三原麗珠「 法と経済学:文献案内にかえて」が参考になるだろう.)

    では経済学的アプローチの特徴とはなにか.いちばん重要なのは社会現象を「個人の合理的選択」---個人は目的をもち,その目的を達成するのに最適な方法を選ぶという仮説---によって説明することだ.経済学者には常識になってしまった考え方なので,あえて名前をつけて呼ばれることはあまりない.一方政治学などに経済学アプローチが応用されるときは, 合理的選択理論(rationalchoice theory)と呼ばれることがある.合理的選択政治理論の学部レベルの代表的テキスト(Kenneth A. Shepsle and Mark S. Bonchek. Analyzing Politics: Rationality,Behavior, and Institutions. Norton, New York, 1997) によれば,政治学は(i)逸話を語るレベルから,(i) 現代の事実と史実の濃厚な記述,そして(iii) 統計的手法によるシステマティックな記述,もっと最近では(iv)(合理的選択)モデルによる説明と分析というふうにシフトしてきた. 重点が記述から説明へ,そして判断から分析へ移ってきたのだ.いうまでもなく合理的選択理論はこのシフトに大いに貢献したのである.なおこのテキストは「政治」を国家レベルや地方公共団体レベルの現象に限定しない.オフィスの政治, 大学の学内政治,教会内の政治,組合内部の政治,家庭内政治など,社会のさまざまなレベルでの現象に適用し,「政治」から神秘的要素を取りのぞいている.

    現在のところ,合理的選択の政治理論は法学部出身の政治学者が研究するよりも,むしろ経済学者が研究したほうが適している面がある.それは法学部と経済学部で受けるトレーニングの差による.法学部学生対経済学部学生の関係にも同様のことがいえ,合理的選択の政治理論は経済学部で教えるにふさわしい.じつは僕がこれまで発表してきた論文のテーマ (Arrow's theorem; the Gibbard-Satterthwaite theorem) はすべて上記のテキストのはじめの方で丁寧にあつかわれている.(ミクロ経済学のテキストでは後ろの方におまけみたいに出てくるか全然出てこないかだ.もっとも僕は経済学部の出身ではない.国際政治学あたりから経済理論へ移っていった一人だ.) つまり僕はこれまで政治理論をやっていたということになる.もともと政治学が社会学とか心理学とかいろいろなアプローチの複合体であることを考えれば, 政治学が法学部に属さなければならないとする根拠は弱い.にもかかわらず「経済学科で政治理論を教えるのはふさわしくない」とする閉鎖的な経済学部もあるそうだ.そんなことでは学問は発展しない.(もっとも学部という体制を解体するほうが望ましいのだけど.)

    話がそれてしまったが,将来は経済学部で政治理論をメインにした授業をやってみたい.概論Aの授業はその前兆ともいえる.今年度非常勤講師を僕からお願いした 小野理恵さんの「 投票制度分析」も合理的選択理論からは外れるが,経済学部でやるにふさわしい政治理論である.なお香川大学で合理的選択の政治学をメインにあつかっているのは法学部の金子太郎さん(経済理論にもひじょうに詳しい)が担当している「 公共選択論」である.この授業を選択する経済学部の学生は,法学部の学生よりも優秀な成績を収めなければ恥だといえるかもしれない.

    理由3: 経済理論全体の構造を把握しやすくなる

    メカニズム・デザインの枠組みを知ることは,経済理論全体の構造を把握しやすくする.メカニズム・デザインは広範な理論群を統合する枠組みである.標準的な経済理論で学ぶ一般均衡理論やゲーム理論,そして(経済学よりも数理政治理論で標準的な)社会選択理論はそれぞれメカニズム・デザインの理論を構成する部品になっている.メカニズム・デザインを学んで全体像を把握する「地図」を得れば,部分は理解しやすくなる.

    理由4: メカニズム・デザインはひじょうに常識的な考え方にもとづいた応用範囲の広い理論である

    社会的なメカニズム(契約や制度的な取り決めなど)をつくるときには,ひとびとがそのメカニズムにどう反応して行動するかを予想しつつつくらなければうまくいかない.そして行動の結果を判断するには,そのひとびとにとってそれが望ましいのかどうかを考える必要がある.たとえば私有財産制を否定した社会主義経済体制ではひとびとは労働意欲を失ってしまい,生産力の大幅な低下がおきてしまった.その失敗の結果, 政治経済体制は「その体制が理想とするようなやり方でひとびとが行動したときに実現するであろう結果」によって判断されるべきでなく,「その体制で現実のひとびとが行動したときにおこる結果」によって判断されるべきである という,当然のことがやっとだれの目にも明らかになった.メカニズム・デザインはこのだれの目にも明らかなこの考え方をもっともストレートに定式化した理論である.応用範囲も選挙制度,契約,オークション,官僚組織の意思決定システム,公共財の供給方法など,さまざまな政治現象や経済現象におよんでいる.

    理由5: はじめて経済学を学ぶための標準的科目は他にある

    たとえば全学共通科目のミクロ経済学やマクロ経済学は,経済学をはじめて学ぶ(そしてそれ以上は学ばないであろう)人のための科目である.これらベビー向け科目についてはすでに説明した.

    理由6: 経済学が量ばかりをあつかうわけではないことを強調できる

    経済学は数学的な学問だと知って,「あ,経済学はお金とか取引数量とかの数をあつかうんだな」と納得してしまう学生がいる.この科目を勉強すれば,数学や経済理論にたいするこのような誤解は一掃されるだろう.現代数学の主な対象は抽象概念であり,いわゆる「数」ではない.この科目では人びとの好みや価値観,社会的なルール,個人の権利,効率性,といった 概念を(量的な指標に翻訳することなく)数理的な方法で採り上げる.量で表せるデータを主にあつかういわゆる理系科目(教養レベルの物理学や化学や生物学や工学など)よりも,(量化しにくい対象をあつかう)経済理論の方が本質的な意味で抽象数学を必要とすることが理解できるだろう.


    どのていど勉強すればいいか

    学則によれば,2単位のコースでは 45×2=90 時間の学修を必要とすることになっている.一学期は約15 週間あるので,これは週あたり 6 時間だ.そのうち講義90分を2時間とかぞえれば,週4時間は予習復習することが標準である.「授業に全部出席しても単位がとれないような科目があるのは間違いだ」という学生がいる.それ(その学生によって間違いだと指摘された考えではなく,その学生の考え)は100パーセントまちがいである. 授業に全部出席するだけで単位がとれるような科目があることの方が間違いなのだ.このステートメントに同意できない学生は,私のこの授業は避けたほうがいい.(つぎのリマーク参照.) 本来ならば,学生を続けることも考え直したほうがいい.

    この科目の場合,平均的な一年生が週4時間自習するだけでは,合格ラインには届かないことはないだろうが十分な理解にはちょっときついのではないか.一方, すでに数理後進性から解放されている学生(数学科の上級生など)ならば,授業に出るだけで優秀な成績をおさめることができるかもしれない. ひょっとすると試験を受けるだけでも優秀な成績をおさめることができるかもしれない.(じっさい問題文を読むだけでその問題に解答を与えるための知識がほぼ得られるように試験問題を作ることが私のばあい多かった.「 試験時間中に試験勉強ができる試験」である.)つまりすぐ上の段落でいった間違いを私自身が犯そうとしているわけだ.これにはとうぜん「もっときびしくして欲しい」という不満もあるだろう .しかしこの科目の最大目標である「大学レベルの数理系科目を学ぶための抽象的思考力を養成すること(数理後進性からの解放)」をすでに達成している学生を落とすだけのために,わざわざ問題を非本質的なものに変える気はない.このことから,論理学や数学を同時履修することによって抽象的思考力を養いながら,概論Aの勉強を進めていくのは有効な戦略であるといえる.もちろんこの概論Aのために余分に費やした労力は,将来多くの科目の理解を高めることになるはずだ.

    リマーク.私自身はこの間違いをしょっちゅう犯している.「三原だから評価が厳しい」というのは事実に反する.登録者全員あるいは大部分に優を与えることも多かった. 私の成績評価が厳しいかどうかは,科目に大きく依存する(実績は授業記録ページ を調べれば分かる).基本的には,きちんと勉強して理解すれば確実に好成績が出ることと,きちんと勉強すればかなりの学生が理解できることとを方針としている.きちんと勉強しない人や理解していない人がどうなるかについては方針はない.全員を優にすることもあったし,全員を不可にする可能性もある.全員を不可にするのを避けるためにあらかじめ「期末試験受験者の1パーセント以上の合格を保証する」などと約束することもあるだろう.


    関連科目の受講生の感想

    数理権利論とメカニズムデザインをカバーした科目としては1999年度演習「規範経済学の最前線」がある. その演習の受講生の感想は,この授業を取るうえで参考になるだろう.


    学者,あるいは経済学者はどんな生き物か

    三原麗珠の紹介ページ参照.


    試験問題


    成績

    シラバスの「単位認定方法」に「原則として期末試験による予定」と書いた.よって期末試験をメインにして成績を出した.(中間試験の結果については6/22/00のログ参照.期末試験の結果は受験者数116名,平均点29.36点.詳しくは7/27/00のログ参照.)具体的には,期末試験(マークシート+記述)で70点以上を優,60点以上70点未満を良,50点以上60点未満を可,50点未満を未定としたあと, 未定の者については中間試験の点数を期末試験の点数に加算して,その合計が50点以上になる者を可とし,それ以外の者を不可とした.つまり中間試験は不可の救済のためにのみ用いた.

    結果のグラフ標示は別ファイル.特徴的にいえたのは:


    受講生の感想,最優秀者のプロフィール

    期末試験のコメント欄から

    成績最優秀者のプロフィールと受講の感想


    授業記録

    香川大学経済学部 専門教育科目 2000 年度
    授業科目名 経済学概論A (メカニズムと権利)
    教官名 三原麗珠(経済学部) / H. Reiju Mihara

    4/20/00 first meeting
    授業前の掲示:「この授業の受講予定者は
            文献 [R] 三原麗珠. 権利論への数理的アプローチ: レクチャーノート, 1999. 
                  (pdf file) 
    の第1章を入手して,初回の授業に持参してください.上記文献の 23 ページまで
    (第1章をふくむ) と 56, 57 ページを「三原ノート1 (導入篇)」の商品名で 4月
    19日水曜日から大学生協にて販売しますので,ご利用ください.」

    Handout:
            -「香川大学で経済学を学ぶために: モデルプログラム」(Web page) 永久保存版!!
            -拡張シラバス (Web page)
    Students should get: 
            -[N] 永谷裕昭. 経済数学. 有斐閣, 1998, pages 23-37
            -[K] 嘉田 勝. 気まぐれ数学談話室第3話. どんな病気にも効く薬がある:数学で使う「言葉」のおはなし
    大学生協にて販売(Web でも入手可)
            -[R] 三原麗珠. 権利論への数理的アプローチ: レクチャーノート, 1999. pages 1-23, 56-57.
                    (Extra として p. 10 までを100部配付.)
                    
    Lecture: モデルプログラムと拡張シラバスに簡単に触れた後,ノートの10ページまでを一気にカバー.
    プレリュード.
    240名程度出席.

    4/27/00 second meeting
    授業前の掲示:
    「生協で『三原ノート1は売り切れた』と聞いた学生がいたようですが,それは誤りです.4月20日16:20現
    在,このノートは売り切れていません.第3回の授業の内容までカバーするので,入手して
    おいてください.」

    Handout: なし

    Lecture: ノート[R]の pages 11-16 選好の導入まで.集合.

    ●教材提示カメラはレクチャーノートの文字を十分鮮明に捉えた.モニターでは不十分かも
    しれないが,スクリーンでは十分鮮明.
    ただしホワイトボードの左半分がスクリーンになっており,その部分だけ照明を消すという
    ことができない.しかも照明用のスイッチがホワイトボードの左端で教材提示装置が教卓の右端
    というふうにまったく離れた,使い物にならない,とぼけた配置.ホワイトボードを使いにくい.

    5/11/00 third meeting
    授業前の掲示:
    [begin keiji]
            ●以下の必読文献を「三原ノート1」「三原ノート2, 3」の商品名で大学生協にて販売中.
            「三原ノート2 (デザイン篇)」に当たる部分を5月18日の授業までに入手して,持参してください:
                          [M] 三原麗珠. メカニズム・デザイン: レクチャーノート, 1999. (pdf file) 
                                       授業関連部分: 「三原ノート2 (デザイン篇)」(1-21 ページと 31-33 ページ,
                                                               そしてFigures 2ページ分と旧約聖書からのコピー; ネットにない Figure 5.3 
                                                               [単に Figures とあったものを授業後訂正]と旧約からのコピーは授業でも配付).
                          [R] 三原麗珠. 権利論への数理的アプローチ: レクチャーノート, 1999. (pdf file) 
                                       授業関連部分: 「三原ノート1 (導入篇)」(0-23 ページと 56, 57 ページ); 
                                                               「三原ノート3 (権利篇)」(36-55 ページとFigures 3ページ分).
            
            ●John Moore (1992; pages 182-213) が,3号館3階共同研究室の佐藤幹子さんから
            入手できるようになりました.5月11日の授業でも部数限定で配付します.[5/18も配付予定]
    [end keiji]
    学生から: 5月15日に生協に三原ノート2,3を買いに行ったところ,モノはあるんですが
            「値段がわからないので売れない」と言われました.どうなっているんでしょうか?
                    →僕が値段を指定したわけじゃないので,生協の問題なんですよね,それ.

    Announcement: オフィスアワーは月曜午後と木曜授業後,要予約.詳しくは次回までに発表.
    もちろん授業時間に質問していい.

    Handout: John Moore (1992; pages 182-213) 限定15部配布.佐藤さんの進言もあって,
    追加を配付予定.

    Lecture: 
            ノート[R] の 15-19ページ.選好,関数,直積,合成関数.
                    ●17ページの最後の Exercise 1 のヒントとして口頭で行った答に,ミスがあった.
            永谷 pages 8-10 「ならば」について.
            嘉田 [K] "for all" と "there exists" との順序問題.
            ノート[R] pp. 20-21リマーク.論理記号.
                    ●リマークの演習は永谷1章の練習問題4と対象領域が異なることに注意.
    110名程度出席.

    授業後の雑感: 
    オフィスアワーを設けたけど学生来なかった.(同姓の同僚のことを
    佐藤幹子助手と間違えた学生が,その同僚の研究室に Moore 論文をもらおうとして
    来た模様.) 授業の日ということで,今朝は徹夜した.徹夜のため頭があまり
    働かないせいで,低能な役人の文章を読んだり雑用をしたりするのが少しきつい.
    こんなときは,学生と駄弁るとか,授業の質問に答えるとか,頭を使わない仕事が適する.
    (ハダカの写真集を眺めている学生をよそに,僕はネットサーフィンしてることも.)
    でもだれも来なかった.

    文部省から研究にかんする調査あり.何度読んでも意味が通らない.
    すこし頑張って読んだら,日本語がまちがっていることが判明.
    しかも来年3月までの過去3年間に論文3本書きましたかと聞いている.
    (簡単にいうけどなあ……)
    過去3年間なのか,来年3月までの3年間なのか,どちらかはっきりしろって.
    こういう頭が悪い役人の書く調査になんでまともに答えなきゃいけないんだ.
    ちょーむかつく!
    文部省の役人って大学出てるんだろうか.こんなクズ役人(になった人)
    を卒業させたのは,どこのダメ大学なんだろう.

    外はこんなに奇麗な雨の夕暮れどき(不可能な光景?)だというのに,
    質問に来た学生だけでなく,不思議なことに
    「ドライブに連れてってください」
    と僕を誘いに来た学生もいなかった.(幸い「津田のバイト先まで乗せてって」
    というのもいなかった.) そんなわけで,僕はひとり五色台に車を走らせた.
    こんな日は瀬戸内海沿いのあの山の中は霧でいっぱいになる.そして今日も
    そうだった.濃い霧のなか,採算が採れなくなって去年無料化してもなおほとんど車のない
    旧有料道路を車でとばすと,シーツでつぎつぎと包み込んでくるように
    幻想的な世界が僕の目の前に展開した.開けた車窓からはひんやりした
    霧が鼻から入り込んで,朦朧とした頭脳に粒子のようなここちよい刺激を
    与えてくれた.

    5/18/00 fourth meeting
    授業前 Web 掲示追加:
    [begin keiji]
            ●John Moore (1992; pages 182-213) が,3号館3階共同研究室の佐藤幹子さんから
            入手できるようになりました.前回に続き5月18日の授業時にも70部限定配布する予定です.
            この論文は,この授業の第 II 部にあたる講義ノートの下敷きになりました.
            テキストにあたるものがないと不安な学生は入手するといいでしょう.
            ●Peter J. Hammond (1995)  は??月??日[数週間以内]に70部配布します.
            ●三原オフィス(研究室)にご用の方は,原則として以下の日時にお願いします: 
                    月曜日1240-1700; 木曜日 1620-1800.
            補習その他の予定を入れてしまうことがあるので,前日の17時までに
            メールをくださるか,当日の授業時に直接確認をとってくださったほうが,確実でしょう.

            授業にかんする質問を優先するけど,雑談でも,アラーキー写真集を見に来るのでも,
            僕の売りたい本を買いに来るのでも,オルガン音楽をちょっと聴きに来るのでも,
            単に研究室の壁に貼ってある女の子のポスターを見に来るだけでも,べつに構わない.
            (今夜中に小樽まで車で連れていけとか,試験問題をぜんぶ教えろとか)
            法外な要求をしにくるのも悪くはないけど,たいてい笑って断る.
            (例えば)セックスの悩み(?)相談を僕に持って来る人も
            いないだろうけど (保健管理センターにでもどうぞ),
            学業にかんする(悩み事?)相談というのは,あるかもね.一流をめざす学生
            以外の参考になる情報はあまり持ってないと思うので,期待しないように.
            こちらが頼まない金品を持ってきてもいいけど,とてもおいしそうなもの以外は,
            たぶん受け取らない.
            (「ほか弁買ってきてくれないかな?」と頼んだことはある.) 
            上記のオフィスアワーはたいてい(徹夜明けで)頭が働いておらず研究にならないので,
            授業の質問に答えるような簡単な仕事が向いている.遠慮なく来てくれるといい.
    [end keiji]

    Announcement: 佐伯 [S] を読み始めること.
            特に序章 (pp. 8-10)とII章(pp. 55-71)はいま読むのがいいタイミング.
            「われわれは何について勉強しているのか」,そして「それはどういう意義を持っているのか」
            といった問題について理解を深めるための,バックグラウンドとしての読み物と考えていい.
            したがって細かいところにはそれほどこだわらずに読み進んで欲しい.

    Handout: 旧約聖書 列王紀上3.16-28.  Figure 5.3.
    Moore (1992; pages 182-213) を60部配付.3号館3階共同研究室佐藤幹子さんのところに10部.

    Lecture: ノート [M] の pp. 1-10 (ナッシュ均衡の直前まで).
    非協力ゲーム理論の予備知識.

    Office hour: 佐伯のコピー4部を希望者に配付した.
    99年度関連2科目の期末試験問題を希望者に配付した.メカニズム・デザイン99については
    正解も配付.権利論99については問題(正解無し)のみ配付.Web page のものは
    問題のみのバージョン.

    5/25/00 fifth meeting
    Handout: Hammond (1995) 60部配付.3号館3階共同研究室佐藤幹子さんのところに10部.
    これにて必読文献と重要関連文献の配付は完了.あと配るとすれば演習問題の正解なんかだが,
    配ることに反対する学生いるかもと思い,手を上げさせてみたが,いなかった.
    Announcement: 数学と論理能力どちらが大切かという質問への返答:
    それらを分けることはむずかしい.ただし必要な数学知識はすでにこれまでの
    授業でカバーした.

    Lecture: ノート [M] の pp. 10-17.
    非協力ゲーム理論の予備知識(ナッシュ均衡),遂行理論のフレームワークなど,ナッシュ遂行.
    演習例: 16ページのナッシュ遂行不可能性をしめす演習の類題としては,たとえばまず状態βを考えて
    f(β)=b から議論を出発するやり方が考えられる.

    オフィスアワーに訪れた学生なし.この調子だと合格者ゼロか?
    律義な僕は前日約束したとおり Kさんを誘って五色台へ.
    あの凍りついた銀色の海の夕刻も世界全体が灰色につつまれていて幻想的でよかったが,
    抹茶アイスもおいしかった.ね.
    (5月29日月曜のオフィスアワーの後,オフィスに来た K さん.
    「学生が来ても突然アラーキーの写真集とか見せたらだめですよ.
    リピーターになってくれなくなりますよ.」いろいろなモノを脈絡無く披露した
    夕刻だった.さて,K さん自身はリピーターになるだろうか.)

    6/1/00 sixth meeting
    Announcement: いずれも授業とは直接関係ない.
    -教育12ちゃんねる掲示板 (http://hpcgi1.nifty.com/kkcloud/hibbs095.cgi)が開設されました.
    教育・大学・学部学科などに関する自由な議論の場を提供するために,地域社会システム学科教員の
    雲さん (http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~k-kumo/indexj12.htm)が
    設置した,匿名書き込み可の掲示板です [消滅].ワースト教官・ベスト教官というスレッドも
    あるようです.「三原の授業は高校以下のレベルだ.もっとむずかしい数学使ってぜんぶ英語で講義しろ」
    といった,授業の感想などを書き込むといいでしょう.文句だけでなく,たまにはいいことも書いて欲しい.
    -英語学習システムの利用登録を開始(http://academy.cc.kagawa-u.ac.jp/)しました.
    学内でのみ利用できます.画期的なシステムらしいので,来年度以降,日本語で授業する必要は
    なくなるかもしれませんね.

    Lecture: ノート [M] の pp. 16-19
    ナッシュ遂行の復習,支配されないナッシュ均衡,
    別払いのあるメカニズムによるサブゲーム完全遂行

    質問ある学生がいたので,オフィスに来てもらった.10分程度.
    6月5日月曜日生協チェック.
    三原ノート1はだいぶ売れ残っている.三原ノート2は60部印刷した
    あと,40部追加したらしい.あと25部くらい売れ残っている.

    6/8/00 seventh meeting
    Handout: 数理権利論演習正解例,メカニズムデザイン演習正解例.
    (おそらくメカニズムデザイン演習正解例の第2ページと数理権利論演習正解例の第2ページ
    が入れ替わっている.)

    Announcement: 
    -次週予定の試験.演習の類題ではない問題形式としては,定義を聞くものがあり得る.
    たとえば「選好」「支配戦略」「最適反応」「ナッシュ均衡」などの定義を,ノートと
    ちがう記号法(選択肢x, y のかわりに a, b を使うとか,戦略s' のかわりにtを使うとか)
    でも書けるようにしておくこと.マークシートを使う予定.読み取り信頼度が
    もっとも高いのは,HBの鉛筆.試験範囲: 
            拡張シラバス(特に「経済学はどんな学問分野か」に注目),
            嘉田[K] (「おまけ」は除く),
            三原[R] の 1.1-3.2 節 (pp. 1-23, Social welfare funtion の前まで)と 5.1-5.2節 (pp. 36-38),
            三原[M]の2.1-2.2節 (pp. 6-12).
    -演習例: Figure 5.3 の利得や Stage 3 の分岐条件は自分で記入できるべき.
    -演習例: Page 20 の演習で,Figure 5.3のかわりに Bess ではじまる同様のゲームを考える.

    Lecture: ノート [M] の pp. 20-21, pp. 31-33. 
            別払いのあるメカニズムによるサブゲーム完全遂行,
            メカニズムデザインの問題点と今後の方向.
    ノート [R] の pp. 36-7, pp. 21-2.
            「社会選択ルール,ゲームフォーム,提携のパワー」の「はじめに」,
            フレームワーク「選択肢」まで.
            
    After the class: オフィスアワー訪問者なし.
    -大学Web サーバー利用ガイドライン決定との連絡あり.表現の自由否定派の勝利.
    結果も汚いが,彼らのやり方も吐き気がするほど汚かった.「よそのサーバーで
    やればいい」なんて言っている否定派は,大学の責務に対する自覚がぜんぜんないね.
    個人の創造性をつぶすような大学に何の存在価値があるのだろう.
    こんな抑圧的な環境にずっといたら,狂ってしまいそうだ.苦しい.
    -他の誘いを断ったという K さんと,にんにく屋でドラゴンファイアーなど.
    火を吹くエビチリ.空港は雨.深い霧の中を通って,新しい風景に入った.

    -6月12日月曜日
            試験前だというのに学生来ない.経済学は選択の科学.
            この授業,落とすことを選択しているのかな.
            ある終結のメール.細い橋を渡っていたら,とつぜん橋自体が落ちた感じ.悪夢.
            同僚とゆめタウンでお買い物.きょうは musk (じゃこう)のお香をたいて
            いい夢を見よう.

    6/15/00 eighth meeting
    Handout: [M]の32ページ.生協で販売したノートでは抜け落ちていたページ.
    Announcement
    -佐伯 [S] の IV 章を読み始めること.
    (序章 (pp. 8-10)とII章(pp. 55-71)はすでに読み終えているはず.
    III章までの他のページは必須ではない.読むと背景知識が得られて理解は深まるだろう.)
    バックグラウンドとしての読み物なので,細かいところにはそれほどこだわらずに読み進んで欲しい.
    -試験の正解は三原オフィスのドアと経済学部掲示板に掲示する.試験結果の掲示については未定.

    Lecture: ノート [R] の pp. 21-23, pp. 37-39.
            フレームワーク,社会選択ルール
            -さすがにいつもより出席者が多い.123人受験.
            同僚 M からの報告によれば,「なにあれ,むずかしそう」とか
            洩らしながら(ひさしぶりに?)授業を受けていた学生がいたそうだ.
            試験の準備したなら,なにやってるかくらい分からないかな.
            
    第1回中間試験 (1545-1610):
    -分かっている人にとっては,瞬時にできるような問題がほとんど.
    -この試験が最終成績にどう反映するのかを試験前にたずねた学生は結局いなかった.
    ペイオフを把握しないまま行動しているわけであり,合理性を追及する科学を学ぶ
    学生としてすでに失格.
    -助手の佐藤さんと同僚 M が試験監督.Mさんは僕の授業をいちど見物したいと
    いっていたので,「いいけどかわりに試験監督もたすけてくれないかな」と条件を
    出して手伝ってもらった.ごくろうさま.

    -試験直後なのでオフィスアワーはキャンセル.もと女子高生と五色台に夕日.
    駐車場から500メートル離れた大崎の鼻展望台?まで歩いたのははじめて.
    予想通り眺めは悪かった.備讃瀬戸方面が少し見える自然のなかの「密室」.
    夕食はレトロなお店でチンチンとか歌うナンセンスな曲を聴きながら,
    火を吹くオロチョンラーメン他.

    6/22/00 ninth meeting
    Announcement: 
    -これから授業内容が高度になる.中間試験をした理由の一つは,
    これからの授業についていく準備をしてもらうためだった.
    -試験結果: 標準偏差2.2,平均 7点(16点中),受験者 123人.
            得点度数分布
            002,経済学概論A(中間),16-16,0.0%,(0人)
            002,経済学概論A(中間),15-15,0.0%,(0人)
            002,経済学概論A(中間),14-14,0.0%,(0人)
            002,経済学概論A(中間),13-13,0.0%,(0人)
            002,経済学概論A(中間),12-12,2.0%,(3人)
            002,経済学概論A(中間),11-11,4.0%,(5人)
            002,経済学概論A(中間),10-10,8.0%,(10人)
            002,経済学概論A(中間),9-9,9.0%,(11人)
            002,経済学概論A(中間),8-8,18.0%,(22人)
            002,経済学概論A(中間),7-7,20.0%,(24人)
            002,経済学概論A(中間),6-6,12.0%,(15人)
            002,経済学概論A(中間),5-5,10.0%,(12人)
            002,経済学概論A(中間),4-4,11.0%,(14人)
            002,経済学概論A(中間),3-3,4.0%,(5人)
            002,経済学概論A(中間),2-2,2.0%,(2人)
            002,経済学概論A(中間),0-1,0.0%,(0人)
            
                    合格ラインの10点以上は18人で,
                    受験者の10パーセントは越えている.まあこんなものだろうか.しかしある
                    程度やる気がある学生がこの授業に残っていると考えれば,合格ラインをこ
                    える学生がもっともいてもおかしくない.それよりも,一流の学生を育てよう
                    としているこの授業にとって,上位者の層が薄すぎる(というよりゼロ)のは
                    かなり深刻な問題.
                    
            問題別回答率(*は正解)
            002,経済学概論A(中間),1,0.8 ,6.5 ,14.6 ,78.0*,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),2,2.4 ,61.8*,1.6 ,3.3 ,8.9 ,2.4 ,2.4 ,3.3 ,0.0 ,13.8 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),3,0.8 ,4.1 ,7.3 ,2.4 ,0.8 ,8.9 ,60.2 ,1.6 ,11.4*,2.4 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),4,43.9 ,3.3 ,3.3 ,7.3 ,4.9 ,7.3*,0.8 ,19.5 ,8.1 ,1.6 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),5,15.4 ,13.8 ,39.0*,30.9 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.8 ,0.0 ,0.0 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),6,29.3 ,18.7*,35.0 ,17.1 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),7,5.7 ,50.4 ,40.7*,2.4 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.8 ,0.0 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),8,16.3 ,6.5 ,35.8 ,40.7*,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.8 
            002,経済学概論A(中間),9,0.8 ,2.4 ,9.8 ,4.1 ,77.2*,4.9 ,0.8 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),10,2.4 ,5.7 ,10.6 ,26.0 ,35.0 ,20.3*,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,0.0 
            002,経済学概論A(中間),11,2.4 ,0.0 ,82.1*,4.1 ,1.6 ,1.6 ,5.7 ,0.0 ,0.0 ,0.0 ,2.4 
                    
                    設問3&4: xR_iy は「i は x を y 以上に好む」の意だが
                    「i は x を y よりも好む」と解釈して答えた者が多かった.
                    ひっかけ問題にはしたくなかったので,はっきり問題文にも解釈を書いたが,
                    それでもひっかかった回答が多かった.問題のでき(優秀な学生を識別する能力)
                    をー1から+1の範囲で数値化した「識別指数」も,これらの問題のものが +0.20,
                    +0.17と,もっとも低かった.
                    
                    設問11のナッシュ均衡を求める問題の正答率が82.1パーセントと,もっとも高かった.
                    いかにも均衡っぽい数値で問題が与えられていたという理由もあるだろうが,
                    授業中ていねいに説明すれば理解はできるということか.(じつはノートではナッシュ均衡
                    の求め方にはほとんど触れていない.) 逆にいえば,メインであるはずの自習をさぼって
                    講義に出席するだけでこの授業を乗り越えようとしている学生が多いということかもしれ
                    ない.大学の授業の性格,分かっているのだろうか.演習問題は自習にまかせるという方針
                    を変えるつもりはないが,補講で演習問題の解説でもすれば試験の成績はあがるかも
                    しれない.
                    
    -期末試験はこの学期にやったことの全体をカバーする.
            選択式の問題ばかりとはかぎらないので注意.
            中間試験はやさしい問題がほとんどだった.
    -講演会開催のお知らせ(引用)
            このたび、日本銀行高松支店長 田中克(まさる)氏によ
            る講演会を下記の要領で開催する運びとなりました。関心のあ
            る学生諸君の多数の出席を歓迎します。
             この講演では、講師ご自身の豊富な体験を交えながら、でき
            るだけ分かりやすく、経済学を学ぶことの意味や大切さをお話
            いただける予定です。
            題目:「経済学的発想の普遍性,万能性: 日銀,IMFの仕事で体得したもの」
            開催日時:2000年6月30日(金)午後1時〜2時30分
            開催場所:経済学部 E21講義室
            対象:経済学部・法学部の学生

    Lecture: ノート [R] の pp. 39-44 (例の前).
    センの定理,Gibbard のパラドックス.出席65名.

    授業後,学生2名オフィスへ.∀∃順序問題,反射性など,中間試験
    についての質問.
    22時近くまで研究室で作業.まだぜいたくラーメン福一は開いているだろうけど,
    郷屋敷や山かつはたぶん閉まっているだろう.
    そんなわけで(?)ということもないが,ギョウザやまあぼう豆腐を食べること
    になった.

    6/29/00 tenth meeting
    Announcement:
    第1回中間試験の結果が「学籍番号,得点,正誤(○と×)」の形式で
    3号館3階共同研究室前に掲示されています.
            例:             00E0??  5       oxxxxxxoxxo
    自己採点結果とちがうばあいは,その研究室の佐藤幹子さんに言ってください.
    苦情受付期間は7月7日(金)までとしておきます.
    [どうでもいいが,その日は
    三条の馴染みの美容室で99年の3月以来はじめて髪を切って
    エコディマーレという海の見えるイタリア料理店でフルコース.
    もとシーバルと呼ばれていた瀬戸大橋の見える丘にも行った.
    結婚式場になっていた.
    カップルが多いと思ったら,七夕なんだね.]

    Lecture: ノート [R] の pp. 44-51 (演習1まで).

    ハードディスクがクラッシュしてしまった日.[その後の仕事に大きく影響が出た.]
    7月3日のオフイスアワーに学生一人訪問.Privately oriented preferences などについて.

    7/6/00 eleventh meeting
    Announcement: 
    -来週7月13日は通常の4こまめの授業に加えて,5,6,7こまめもつかって
    補講をする.演習問題を中心にやる.[実際は7コマめには終わっていた.]
    -来週月曜のオフィスアワーはキャンセルのつもり.

    Lecture: ノート[R] の pp. 51 (演習2)-55.  これで予定していた範囲の講義はおしまい.

    7/13/00 twelfth, thirteenth, fourteenth meeting
    Announcement:
    「メカニズムと権利」試験直前情報 (7月25日更新)
    試験を受けるにあたっての注意,そして一部の問題の予告: 
    ●今回は中間試験問題と99年関連2科目の過去問のバリエーションが多くなりそう.
    それらをきちんと理解しておけば「良」はとれるだろう.
    ●マークシート方式以外の記述式問題の配点は10から20パーセント程度.証明の問題
    が出る.
    ●たとえば証明を穴埋め形式の問題にするとき,ノートにしめした証明の
    順番に従わないことがある.だから「社会選択ルールにかんするセンの
    定理の証明では最初にa,つぎに c, そして最後に b が C(X,R) に属さないことを
    しめす」というような覚え方をしていたら失敗する可能性が大きい.
    ●解答に必要のない前提条件を問題に入れることがある.たとえば p. 51の2番目の
    演習では,「(a,c),(c,a)が個人1の権利関係に属している」
    という条件を加えても,結果には影響しない.逆に,解答に必要のない前提条件を
    はずすこともある.
    ●センの定理にかんする問題は絶対に出る. 
    たとえばある選択肢 x が C(A,R) に属さないことは
    パレート条件からいえるのか,権利体系の尊重からいえるのか押さえておくこと.
    また,具体的にはどういう条件(たとえば全員がx以外のある選択肢を好んでいるとか)
    がみたされることからいえるのかも理解しておくとよい.
    ●ハモンドの定理4には「強均衡」とか「自由尊重型」などの概念が出てくる.
    それらを具体例で押さえておくこと.
    ●演習の類題ではない問題形式の例としては,定義を聞くものがある.たとえば
    「社会選択ルール」とか「権利体系の尊重」とか「自由尊重型」などの定義を
    たずねたりするかもしれない.その他,「社会厚生関数」「パレート条件」
    「最小限の自由(Minimal Liberty)」「権利体系」などを確実に押さえておくこと.
    もちろん「最適反応」「ナッシュ均衡」「支配戦略」も基本の基本.
    ●条件の名前を変えることがある.
    条件や用語の定義を把握しておくこと.たとえばα-libertarianとかβ-libertarian
    といった用語の内容を把握せずに「α-libertarianならばβ-libertarianである」
    と覚え込んでいても通用しない.

    ●ゲームやゲーム・フォームの問題では,演習のものと数値が変わるとか,
    行や列が入れ替わるなどの操作が加えられていることがある.
    「最初の行の最初の列が均衡」のような覚え方は通用しない.
    ●フレームワーク自体は演習としてはあげていないが,
    できるだけ正確に理解することが全体の理解度を高める.
    フレームワークは言葉のようなものだから.
    ●分析例での注目点(穴埋め問題などで穴になりそうなところ):
    -ある特定の数値や式がでてくるのはどうしてか(どの前提や式から出てくるか)?
    -だれ?
    -どのStage?
    -どの利得を比較?
    ●ソロモンの選択関数のナッシュ遂行不可能性の証明では,状態αから議論を
    はじめた.しかし状態βから同様の議論をはじめることも可能.

    ●問題量が多いかもしれない.試験中に考え込んでいたら間に合わないかも.
    演習の類題はほとんど機械的に答えられるくらいにマスターしておくこと.
    思考力を軽視するわけではない.
    考えることは試験準備の段階でじゅうぶんやっておくこと.

    Lecture: 演習問題の解説.試験のヒント.休憩を2回?はさんで1940まで.
    2コマ目に出た学生35名.3コマ目に出た学生34名.お疲れさま.
            このログに初登場の女子学生が2人,どうして髪を切ったのか聞いてきた.
            特に理由はないと答えた.学期中に切るつもりだったことがひとつの理由か.
            切ったほうがよくなったと2人そろって言っていた.
            「よくなったから,いっしょに小豆島行って写真集でもつくりましょう」
            とは言われなかった.後日,「切る前の方がよかった」
            と言った文学系の男子学生も現れた.小豆島では今月スピード違反で捕まった.
            57キロしか出していなかったのに.
            記念にオリーブの島郵便局で罰金を払い込んでスタンプをゲットした.

    7月3日に来た学生1名が7月24日に再来.授業期間が終わったからそのつもりでは
    なかったが,月曜日はオフィスアワーだったのだ.
    センの定理関連問題のポイントなどについて質問を受ける.
    ハモンドの最後の定理は分かりにくいと.

    7月25日夕方,試験情報のアップデートを掲示.もっと早く出したかったの.

    7/27/00
    期末試験.
    試験結果: 
    受験者数116名,平均点28.2 (マークシートの90点分中)or 29.36点(記述式をふくむ100点中),
    最高得点80 最低得点5 標準偏差??
    得点度数分布 (マークシート90点分)
    002,経済学概論A期末,86-90,0.0%,(0人)
    002,経済学概論A期末,81-85,0.0%,(0人)
    002,経済学概論A期末,76-80,1.0%,(1人)
    002,経済学概論A期末,71-75,1.0%,(1人)
    002,経済学概論A期末,66-70,0.0%,(0人)
    002,経済学概論A期末,61-65,2.0%,(2人)
    002,経済学概論A期末,56-60,1.0%,(1人)
    002,経済学概論A期末,51-55,5.0%,(6人)
    002,経済学概論A期末,46-50,6.0%,(7人)
    002,経済学概論A期末,41-45,2.0%,(2人)
    002,経済学概論A期末,36-40,9.0%,(10人)
    002,経済学概論A期末,31-35,9.0%,(11人)
    002,経済学概論A期末,26-30,16.0%,(19人)
    002,経済学概論A期末,21-25,12.0%,(14人)
    002,経済学概論A期末,16-20,17.0%,(20人)
    002,経済学概論A期末,11-15,12.0%,(14人)
    002,経済学概論A期末,6-10,4.0%,(5人)
    002,経済学概論A期末,0-5,3.0%,(3人)
    問題別回答率(*は正解)  (マークシート分)
    002,経済学概論A期末,1,4(3.4) ,65(56.0)*,6(5.2) ,4(3.4) ,20(17.2) ,1(0.9) ,2(1.7) ,7(6.0) ,0(0.0) ,7(6.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,2,0(0.0) ,5(4.3) ,9(7.8) ,8(6.9) ,3(2.6) ,3(2.6) ,60(51.7)*,2(1.7) ,14(12.1) ,12(10.3) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,3,41(35.3) ,5(4.3) ,5(4.3) ,11(9.5) ,2(1.7) ,22(19.0)*,2(1.7) ,16(13.8) ,8(6.9) ,4(3.4) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,4,9(7.8) ,50(43.1)*,37(31.9) ,19(16.4) ,1(0.9) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,5,14(12.1) ,26(22.4) ,47(40.5)*,28(24.1) ,0(0.0) ,0(0.0) ,1(0.9) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,6,9(7.8) ,15(12.9) ,58(50.0)*,35(30.2) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,7,3(2.6) ,2(1.7) ,3(2.6) ,84(72.4)*,11(9.5) ,10(8.6) ,3(2.6) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,8,6(5.2) ,4(3.4) ,10(8.6) ,5(4.3) ,7(6.0) ,45(38.8) ,38(32.8)*,0(0.0) ,0(0.0) ,1(0.9) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,9,28(24.1)*,22(19.0) ,55(47.4) ,2(1.7) ,6(5.2) ,88(75.9)*,6(5.2) ,8(6.9) ,1(0.9) ,5(4.3) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,10,16(13.8)*,17(14.7) ,17(14.7) ,18(15.5) ,16(13.8) ,22(19.0) ,23(19.8) ,21(18.1) ,9(7.8) ,39(33.6) ,4(3.4) 
    002,経済学概論A期末,11,7(6.0) ,33(28.4) ,22(19.0)*,20(17.2) ,30(25.9) ,4(3.4) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,12,12(10.3) ,16(13.8) ,19(16.4) ,10(8.6) ,15(12.9)*,14(12.1) ,28(24.1) ,2(1.7) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,13,22(19.0)*,12(10.3) ,36(31.0) ,5(4.3) ,23(19.8) ,5(4.3) ,10(8.6) ,3(2.6) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,14,2(1.7) ,12(10.3) ,18(15.5) ,7(6.0) ,9(7.8) ,31(26.7) ,28(24.1)*,9(7.8) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,15,15(12.9) ,48(41.4)*,34(29.3) ,19(16.4) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,1(0.9) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,16,25(21.6)*,29(25.0) ,30(25.9) ,32(27.6) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,17,16(13.8) ,74(63.8)*,4(3.4) ,7(6.0) ,5(4.3) ,2(1.7) ,3(2.6) ,2(1.7) ,2(1.7) ,1(0.9) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,18,23(19.8) ,8(6.9) ,6(5.2) ,2(1.7) ,0(0.0) ,56(48.3)*,17(14.7) ,4(3.4) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,19,4(3.4) ,6(5.2) ,2(1.7) ,3(2.6) ,10(8.6) ,45(38.8)*,22(19.0) ,22(19.0) ,1(0.9) ,1(0.9) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,20,2(1.7) ,2(1.7) ,2(1.7) ,1(0.9) ,8(6.9) ,2(1.7) ,44(37.9)*,44(37.9) ,7(6.0) ,3(2.6) ,1(0.9) 
    002,経済学概論A期末,21,21(18.1) ,29(25.0)*,61(52.6) ,0(0.0) ,0(0.0) ,2(1.7) ,1(0.9) ,1(0.9) ,1(0.9) ,1(0.9) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,22,5(4.3) ,5(4.3) ,13(11.2) ,11(9.5) ,6(5.2) ,54(46.6) ,14(12.1)*,8(6.9) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,23,5(4.3) ,13(11.2) ,10(8.6) ,10(8.6) ,17(14.7) ,43(37.1)*,14(12.1) ,4(3.4) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,24,52(44.8)*,19(16.4) ,9(7.8) ,4(3.4) ,6(5.2) ,10(8.6) ,10(8.6) ,4(3.4) ,0(0.0) ,2(1.7) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,25,4(3.4) ,19(16.4) ,7(6.0) ,5(4.3) ,17(14.7) ,4(3.4) ,51(44.0)*,9(7.8) ,0(0.0) ,0(0.0) ,0(0.0) 
    002,経済学概論A期末,26,3(2.6) ,10(8.6) ,67(57.8)*,13(11.2) ,4(3.4) ,4(3.4) ,6(5.2) ,8(6.9) ,0(0.0) ,0(0.0) ,1(0.9) 
    002,経済学概論A期末,27,50(43.1)*,10(8.6) ,9(7.8) ,11(9.5) ,7(6.0) ,8(6.9) ,6(5.2) ,12(10.3) ,0(0.0) ,1(0.9) ,2(1.7)


    講義回数のうちわけ:
    導入3回,メカニズム・デザイン4回,数理権利論4回,問題演習3回,計14回.

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